みなさんこんにちは。
だんだん街も寒くなり、乾燥が気になる季節となりました。僕のお肌もがっさがさなので若さを保つためにも対策をとらねばと思っているところです。
と、まあそんな僕の話はどうでもいいんですけど、ギター愛好家のみなさんは楽器の乾燥には十分に注意しなくてはいけません。
今回は
- ギターの湿度管理怠るとどうなってしまうのか
- 乾燥に対してどんな対策を取るべきか
この2点を詳しく解説していこうと思います。
ギターにおける湿度管理の重要性
ギターの木材は呼吸している
まずギターというのは大半の部分が木材でつくられています。そして木は常に空気中の湿気を吸ったり吐いたりしており、これによって楽器全体の形や重さにわずかに変化が起こります。
これは製作前の木材だけでなく一度完成したギターも同様です。
湿気によるわずかな変形が楽器にとっては大きなトラブルの原因となるため、保管場所やケース内の湿度管理には十分気をつけなくてはなりません。
湿度が高すぎる場合
湿度が高い場合には木が水分を吸い、膨張します。
これにより、
- ネックが逆反りする
- 音がこもりやすくなる
などの影響がでます。
逆反りというのはネックが山のように盛り上がってしまう現象で、これが起こると弦とフレットが近づき音がビれてうまく出なくなってしまう恐れがあります。
また、木材が水分を吸うと重たくなり、表面板が振動しにくくなります。音は物質の振動によって生まれるので、音抜けや鳴りが悪くなると言われています。
湿度が低すぎる場合
逆に湿度が低い場合には木材が収縮します。
- ネックが順反りする
- ネックの幅が小さくなり、フレットによるバリがでる
- 割れる
順反りはネックが弓なりに曲がり、弦とフレットの距離、すなわち弦高が高くなってしまうことを指します。こうなると左手で押さえるのに余計な力が必要で、かなり弾きにくくなってしまうはずです。
また、金属は湿度による収縮がなく、ネック材が乾燥によって痩せるとフレットだけが飛び出してしまうということも起こりえます。
飛び出したフレットは引っかかって演奏の妨げになったり、怪我の元にもなるためはみ出た部分を削り取るバリ取りの作業が必要となります。
そして、乾燥による影響で最も怖いのは板が割れてしまうことです。

一度割れたギターは修理で接着はできるものの、完全に元通りにはなりません。直してもせっかく手に入れたパートナーの傷ついた姿を見るのはなかなかつらいものです。
音に関しては割れがさほど影響しない場合もありますが、放置しておくと弦の張力も相まってどんどん傷が大きくなってしまうこともあるためすぐに対処しましょう。
ギターにとってベストな湿度とは
通説では40~50%
ギターにとって適正な湿度は40~50%と言われています。
実際に日本ではどのぐらいの湿度があるものなのか、気象庁が東京で観測した2012年度のデータをまとめてみました。
案外大丈夫じゃんと思いましたか?ここで見てほしいのは一番右の最小値です。
平均は雨や雪の降った日も合算されているためそこそこの数字になっていますが、最小値で見れば1月などは15%しかありません。
乾いた日に割れれば一発アウトなので油断は禁物です。
実際は気温によってかわる
それから湿度にとってもう一つ重要な要素があります。
それは飽和水蒸気量の違いです。中学校2年生あたりの理科の授業で習うはずですが、普段意識している人は殆どいないと思うので簡単に解説しておきますね。
飽和水蒸気量(ほうわすいじょうきりょう)a(T)[g/m3] は1m3の空間に存在できる水蒸気の質量をgで表したものである。飽和水蒸気密度ともいう。これは温度T[℃]が小さいと小さくなる。
つまり気温によって空気中に含まれる水分量が変わるということです。どのぐらい変わるのかは以下の表を見てください。
はい、ご覧の通り気温と飽和水蒸気量は超ざっくり言って比例の関係です。
気温20度・湿度が50%の場合1㎥あたり8.6gの水分が存在するのに対し、気温10度・湿度が50%の場合、1㎥あたり4.695gしかありません。ほぼ半分ですね。
なので夏と冬の湿度50%は倍近く水分量が違うので簡単に安心してはいけません。上に書いた40~50%というのは年平均でみたときの目安でしかないのです。
以前知り合いのギター製作家も「ギターのことを考えたら冬場は90%とか100%近い湿度があっていいぐらいだ」と言ってました。絶対加湿しましょう。
おすすめの乾燥対策
①加湿器を使う
乾燥対策として一番手っ取り早く確実なのは加湿器を使うことです。
乾燥すると風邪をひきやすくなったりするのでみなさんの体調管理にも効果的。まさに一石二鳥です。
とはいえ楽器のためを思うなら基本的にシーズン中はつけっぱなしにしなくてはなりません。電気代が気になるという方は比較的ランニングコストが安い気化式や超音波式のものを選びましょう。
②ギター用の加湿剤をつかう
部屋ごと24時間湿度の管理をするのは大変という方はケース内だけ管理する方法がおすすめ。
そんな方はギター専用の加湿器を使いましょう。

僕がおすすめしているのはオアシスというメーカーのGuitar Humidifier OH-1という商品です。
筒の中に粉末が入っており、そこに水を加えるだけでゆっくりと適度にギターだけを加湿してくれます。付属のプロペラが弦への負荷を均一に分散してくれるので安心。
ただしギター用の加湿器を使う場合、1つだけ注意すべき点があります。それは部屋とケース内で湿度に差が出る場合があるということです。
部屋に置いた湿度計を見てもケース内がそれと同じではないため、本人はバッチリ対策したつもりでも正しく管理できない可能性があります。
そんなときはギターケース内に湿度計を設置しましょう。
ボタンひとつで瞬時に計測してくれるデジタル式のものやマジックテープでケース内に貼り付けられるものもあります。
③その場しのぎなら
乾燥してるのはわかる!でも専用のアイテムとか揃えられないし、手軽にやりたいという方へおすすめしたい方法がこちら。
おしぼりを小さく開封して、ケース内に入れておくだけ。
たったこれだけでも随分違います。お店でもらったようなものでもいいし、100円均一にいけばだいたい売っています。
また、ウェットティッシュや濡らして固く絞った布を穴の空いた袋に入れておく形でも良いと思います。ただしどちらも乾いてきたらちゃんと取り替えましょう。
ギターの塗装にも注意する
湿度管理において重要なことがもう一つあります。それはギターの塗装を守ることです。
ギターは大抵表面が塗装剤で覆われており湿気や紫外線から守ってくれているのですが、扱いが悪いとこれらが剥がれて木材が外からの影響を直接受けてしまうことになります。
ちなみにギターで使われる塗装剤は
- ラッカー
- セラック
のどちらかである場合がほとんどです。
ラッカーはシンナーやアセトンが溶媒として使われ、マニキュアの除光液などをつけてしまうと割と簡単に解けてしまいます。またゴムでも溶けることがあるので消しゴムなどをギターの上に長時間乗せるのも危険です。
対してセラックの溶媒はアルコールなので、お酒などの付着を避けましょう。パーツによっては無水エタノールなどで掃除をすることがありますが、その際塗装部につけないよう細心の注意が必要です。
またどちらも熱に弱く、温めると簡単に溶けてしまうので直射日光や暖房機器にも十分注意しましょう。
まとめ
- 乾燥するとギターが割れたり曲がったりする
- 部屋かケース内の湿度管理が重要
- 同じ湿度でも気温によって空気中の水分量が変わる
- 日頃塗装を傷めないようにも気をつけよう
楽器には個体差があるため、型番が一緒だからといって弾き心地や音までが全く同じとは限らない唯一無二の存在です。
日頃の管理さえ怠らず、ぜひ生涯のパートナーとして大切にしてみてください。
「ギターに湿度管理が必要な理由と冬の乾燥におすすめの3つの対策」へのコメント
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